2012年6月2日(土) | プライベート
北とぴあに響きわたる日本の原風景
北とぴあ・さくらホールへ、待ちに待った千住真理子ヴァイオリン・リサイタルを聴きに行きました。座席は、前売券発売日に並んでゲットした最前列です。
東日本大震災から生まれた2枚のアルバム
千住真理子さんは、昨年の秋、「日本のうた」「アヴェ・マリア」という2枚の新作アルバムを発表しました。
どちらも3・11東日本大震災の惨状を目の当たりにした千住さんが、音楽家として今できることは何かと考え、兄で作曲家の千住明さんらの力を借りて世に送り出した作品です。
これまでもアフガニスタンの子どもらにランドセルを送る運動など、さまざまなボランティア活動にとりくんでこられた千住さん。今回の震災でも、実際に被災地でのボランティア演奏をされているそうですが、2枚のアルバムが不安な日々を送っている被災者のみなさんへの大きな励ましになることを願ってやみません。
日本の心を世界へ
今回のリサイタルは、「日本のうた」に収録された全12曲を演奏するというもの。これまで何度も千住さんのコンサートに足を運んできましたが、すべて日本の曲というのは初めてのことです。
千住さんは、曲を演奏する前に一つひとつの曲について、ていねいに解説をしてくれました。
今回はクラシック用にアレンジするために、千住明氏ほか6人の作曲家が編曲に携わったとのこと。演奏された曲はどれも、日本人なら誰でも知っている馴染みの歌ばかりですが、もともとの作詞作曲者、今回の編曲者、そしてヴァイオリン、ピアノの演奏者と、何人もの人の手によるコラボレーションで、まったく新しい作品になっていると紹介がありました。
外国のクラシック曲が日本の愛唱歌になった例は、例えばドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」の第2楽章(「遠き山に日は落ちて」として歌われる)などがありますが、日本の歌をクラシックのスタンダード曲風にアレンジしようというのは意欲的な試みだと思います。その結果やいかに。千住さんの演奏を聴き、見事、チャレンジは成功したと確信しました。
なかでも「月の砂漠」「もみじ」は出色の出来だったと思います。
鍛錬された肉体と名器が生み出す音色
それにしても、あの小さな楽器(デュランティ=ストラディバリウスの名器)から、どうしてさくらホールを充満させるような調べが鳴り響くのか。千住さんは、デュランティを「じゃじゃ馬」に例え、10年間にわたって付き合い、手なずけてきたとのべましたが、まさに血のにじむような練習の結果なのだと思います。千住さんの一つの音に対するストイックなまでの執着、妥協を許さぬ音楽家としての姿勢には、強く惹かれるものがあります。
アンコールでは、バッハの「G線上のアリア」、そして「アヴェ・マリア」から「アメイジング・グレイス」を演奏しました。ヴァイオリンの奏でる「祈り」は、日本の原風景とともに時空を超えて、被災地へと届いたのではないでしょうか。
リサイタル終了後、サイン会で千住さんのサインをいただきました。
今後も、千住真理子さんを応援し続けてゆきたいと思います。