活動日誌

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前進座5月国立劇場公演を鑑賞

前進座の国立劇場大劇場出演30回記念、5月国立劇場公演を鑑賞しました。

今回も日本共産党全都後援会の貸切公演ということで、地域のみなさん4人をお誘いしてご一緒に出かけました。今回の演目は、「鳴神」と「芝浜の革財布」の2本立て。

口上は病気で休演の中村梅之助に代わり、藤川矢之輔がつとめました。「大したことはない」とおっしゃっていましたが、梅之助さんの病状が気になります。

歌舞伎十八番の内 鳴神

約束を反故にした朝廷への反発で、雨を降らす竜神を滝壺に封じ込めた鳴神上人。おかげで3ヵ月も雨が降らない日が続き、百姓たちが困っているのを見かねた朝廷は、呪術を解かせるために内裏一の美女、雲の絶間姫を上人のもとへ送り込みます。

さすがの鳴神上人も色仕掛けには抗しきれず、酒を飲まされ酔いつぶれた間に姫に呪術を破られ、竜神が解き放たれます。たちまち豪雨となり、正気に戻った上人は烈火のごとく怒り、髪を逆立てて姫を負う…。

というのがあらすじですが、嵐圭史の鳴神上人と河原崎國太郎の雲の絶間姫のかけあいが絶妙。知徳を備えた高僧である上人でさえ、絶世の美女に迫られるとつい我を忘れてしまうというところが滑稽の極みで、2010年の前進座アメリカ公演(日本語上演、字幕付き)の時にも日本と同じ場面で笑いが起きたといいます。人間の心理は洋の東西を問わず、ということでしょうか。

そういえば、位の高い人物の色恋沙汰というストーリー展開は、妻がいながら小間使いに手を出す好色の殿様を罠にかけ、ギャフンといわせる家来の奮闘を描いた「フィガロの結婚」とも共通しているのかな、と感じました。

芝浜の革財布

もとは古典落語屈指の人情話。三遊亭圓朝の原作です。

早朝の芝浜で、たまたま小判の入った革財布を拾った魚屋の熊五郎。浮かれて酒宴に興じるのも束の間、酔いから醒めると妻から「財布を拾ったというのは夢の話」と諭されます。心入れ替えて働き、自分の店が持てるようにまでなった熊五郎に、ある日、妻が革財布を拾ったのは本当だと真相を語ります。夫婦の情愛をあたたかい目で描く作品。

とにかく熊五郎を演じた矢之輔のコミカルな演技に頬が緩みっぱなし。江戸の貧乏人というのは、本当にあんな風だったんだろうなと思わせる名演です。

妻を演じるのは山崎辰三郎。こちらは淡々とした口調での受け答えの中に、夫への愛情をにじませるというやや難しい役どころでしたが、ベテランらしい味を出していました。

ラストの場面で、妻が真実を語った後、出世するまで絶っていた酒をすすめると、熊五郎はごくごくと2杯も飲んでしまいます。落語に詳しい福島宏紀区議の話では、これがまた夢だったらたまらんといって、熊五郎が酒を断るところで噺が終わるそうですが、個人的には落語の終わり方のほうが良かったように思いました。

歌舞伎は普段、好んで観るわけではありませんが、年に1回の国立劇場公演には、また足を運びたいと思います。