活動日誌

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追悼・わが青春のジュリアーノ・ジェンマ

「ジュリアーノ・ジェンマがローマで自動車事故死」―。

今朝の朝刊に載った訃報に、心が凍てつきました。

イタリア俳優のジュリアーノ・ジェンマは、私にとって、まさに青春のアイドルだったからです。

Giuliano Gemma

ジェンマは、恐らく私が最初に名前を覚えた外国人俳優だと思います。

私が彼を知るきっかけとなったのは、小学6年くらいの頃、テレビで放映された映画「バスタード」です。

映画好きだった兄が観ていたテレビに途中から割り込んだのですが、ストーリーはほとんど覚えていないのに、主演男優だけは強烈な印象が残りました。

その後、彼がマカロニ・ウエスタンの大スターであることを知り、出演映画の情報を収集しまくりました。

今のようにDVDもビデオもない時代です。簡単に映画を観るわけにはいきません。日曜洋画劇場とか月曜ロードショーなどのテレビ映画番組にジェンマが出るとわかると、家族を差し置いてテレビを独占しました。

その頃、ジェンマの新作映画「ミラノの恋人」が封切りになりました。近所の映画館に、共演のステファニア・サンドレッリと並んで写ったポスターが貼られ、心ときめいたのを覚えています。

私は中学1年になっていましたが、一人で映画館へ行ける歳ではありません。意を決して親に頼んでみましたが、題名から濃厚なラブシーンでも想像したのでしょうか、「お前にはまだ早い」といって連れて行ってもらえませんでした。

高校卒業後は、北区西ヶ原にあった東京外語大に入学しましたが、専攻のイタリア語を選択したのも、ジェンマの影響によるところが大きかったように思います。

東京に来て数年後、レンタルビデオ店が各地にできました。私は真っ先にジェンマの出演作をまとめ借りして、徹夜で鑑賞しました。原語で話す映画を観て、大概の作品を日本語で吹き替えていた野沢那智のイメージも変わりました。

マカロニ・ウエスタンが廃れた1980年代以降は作品にも恵まれず、2000年代に入ってからはほとんど映画には出演しなくなりました。最近ではその名を目にすることすらなくなってしまいましたが、晩年は彫刻家としても活躍をしていたそうです。

本当に惜しい俳優を失いました。私が選ぶ出演作ベスト5(順不同)を紹介し、ジュリアーノ・ジェンマ氏の冥福を祈ることにします。

怒りの荒野

凄腕のガンマンの弟子となった掃除人の若者が、やがて師の不正や暴力に疑問を持つようになり、最後は壮絶な対決を迎えることになる。これぞマカロニ・ウエスタン。師となるリー・バン・クリーフがジェンマに教える「ガンマン十戒」を逆手にとってのクライマックスが圧巻。

ザ・ビッグマン

名優カーク・ダグラスと共演したサスペンスドラマ。タッグを組んで金庫破りを企てた2人だが、獲得した200万ドルの札束をめぐって信頼が裏切りへと変わってゆく。若さゆえ、金と色気に目がくらんで身を持ち崩してゆく青年をジェンマが好演。

タイタンの逆襲

「ベン・ハー」や「山猫」などにエキストラとして出演していたジェンマが、初めて主役級の配役をもらった映画。ギリシャ神話をベースにした活劇で、染めたような金髪が印象的。元体操選手としての運動神経をいかんなく発揮し、戦闘シーンでは大車輪も披露していた。

荒野の1ドル銀貨

ジェンマというより、マカロニ・ウエスタンの代表作でもある。弟からもらった胸ポケットの1ドル銀貨で一命をとりとめたガンマン。弟を殺した悪党への復讐を誓い、一人で一味の後を追う。西部劇の本場であるアメリカ受けを狙って、モンゴメリー・ウッドという芸名で出演していた頃の作品。

南から来た用心棒

一匹狼の用心棒、アリゾナ・コルト。フェルナンド・サンチョ演じる残虐な殺人盗賊一派を手玉にとっていたが、ある日敵の手に落ち瀕死の重傷を負ってしまう。やがて隠れ家でのリハビリの末、コルトの銃が次第に盗賊を追いつめてゆく…。フランチェスコ・デ・マージのテーマ曲がいつまでも耳に残る。