活動日誌

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「子どもの目線で放課後を考えるつどい」基調報告

2月2日に岸町ふれあい館で開催した「子どもの目線で放課後を考えるつどい」(日本共産党北区議員団主催)で、私がおこなった基調報告の大要を、当日上映したスライドとともに紹介します。

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この4月から、子育ての環境が大きく変わります。

小学校では、放課後子どもプランが本格的にスタートします。

共働きやひとり親家庭の子どもの生活の場となっている学童クラブは、放課後子どもプランと「一体的」に運営されることになります。

児童館は、利用対象から小学生を除外する新しい方針が策定されようとしています。

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まず、放課後子どもプランから見てみましょう。

放課後子どもプランは、これまで9つの小学校で実施されてきた放課後子ども教室と、学童クラブをあわせて「一体的に」運営し、小学生に新しい遊び場を提供する事業です。

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今年度は、東十条小学校で1年間、モデル事業がとりくまれてきました。

一般登録の対象児童は、1~6年生の児童。実施日は、日曜日と祝日・休日・年末年始をのぞく毎日で、夏休みや冬休み中も実施しています。

運営方針を決めるのは、学校や児童館、PTA、町会・自治会、青少年地区委員会、民生・児童委員などの代表からなる実行委員会です。

実際の運営は、児童館の館長がつとめるマネージャー、プラン担当の区職員、元校長、地域リーダー、児童指導員、地域スタッフ、地域コーディネーターなど地域の力を結集して区直営でおこなっています。

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プランでは、学校内の生活科室、校庭、体育館、特別教室などを使って、ドッジボール、サッカー、卓球、手芸、室内ゲームなどで楽しく放課後を過ごせるようになっています。

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区は東十条でのモデル事業をふまえて、この4月からの2013年度にはさらに4校(浮間・浮間西・岩淵・滝野川第五)を加えて本格実施にふみきります。

続いて、2014年度には8校、2015年度から2019年まではさらに5校ずつ実施に移し、7年間で38すべての小学校に放課後子どもプランを導入する計画です。

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次に、学童クラブとの「一体的」運営について見てみましょう。

ご承知のように、学童クラブは共働きやひとり親の家庭など留守家庭児童の生活の場を保障するために、保護者の強い願いから生まれた制度です。

北区は学童保育発祥の地でもあり、1956年に労働者クラブ保育園と神谷保育園で共同保育が開始され、1958年には町会運営の豊島こどもクラブが全国で初めて発足されました。

1998年にはようやく国の「放課後児童健全育成事業」、すなわち児童福祉法上の事業として位置づけられることになりました。

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放課後子どもプランが実施されると、一般登録の児童も学童クラブの児童も、学校内でいっしょに遊ぶことになります。

違う点は、第1に、実施時間です。一般登録は午後5時で終了しますが、学童クラブは6時まで実施します。

第2に、学童クラブでは、おやつが出ますが、一般登録にはありません。

第3に、料金です。一般登録は原則無料ですが、保険料として年額500円を支払います。一方、学童クラブは育成料5000円とおやつ代1500円で、月額6500円が保護者の負担となります。

第4に、定員です。学童は1クラブ40名ですが、一般登録は定員がありません。

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放課後子どもプランが実施されることによって、小学生の安心・安全な遊び場が確保されることは歓迎すべきことです。

東十条でのモデル事業では、利用した児童や保護者の9割が「満足」「やや満足」と答えるなど、評判も上々です。

同時に、今後の推進にあたっては、心配な面もあります。

それは1つに、民間事業者への委託問題です。

放課後子どもプランはもともと、「地域全体で地域の子どもを見守る」「地域の教育力を高める」ことが本来の目的です。

ところが区は、プランの運営について「民間事業者への委託方式なども含めた多様な運営方式で実施する」としています。

すでにこの4月から実施予定の4校のうち、2校はプロポーザルによる委託の選定が進められています。

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いま北区では、保育園や児童館など区の施設の運営を民間事業者に任せる「指定管理者制度」の導入を大規模に進めています。

そうした中で、埼玉の社会福祉法人が指定管理者となった浮間東保育園では、初年度から職員の大量退職が繰り返され、1期5年が経過しても状況が改善されないまま、事業者が委託運営から一方的に撤退するという事態が起きました。

私たち日本共産党北区議員団は、民間事業者への丸投げをやめ、区立の子育て施設は区が責任をもって運営にあたるよう強く求めてきました。

放課後子どもプランでも、東十条のモデルのように地域の手厚い体制をもって直営で運営することが望ましいと考えています。

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いまひとつの問題は、学童クラブの存続についてです。

放課後子どもプランの中で、一般登録と学童クラブを「一体的」に運営してゆけば、やがてその境界線がなくなり、学童クラブがもつ独自の役割が失われてしまうのではないかという心配の声が寄せられています。

繰り返しになりますが、学童クラブは留守家庭児童の「生活の場」を保障する制度であるのに対し、子どもプランの一般登録はあくまでも遊びの場を提供する「全児童対策事業」です。

2つの事業は性質の違うものであり、全児童対策は学童保育の代わりとはなりえません。

しかし、都内でも品川や渋谷では学童保育は廃止され、世田谷、江戸川、豊島、板橋などでは「一体的運営」によって、その境界線が限りなくあいまいにされてきています。

あらためて学童保育の役割を再確認し、子どもプランが本格実施されても、学童クラブはその役割が果たせるよう存続・拡充させてゆくことが必要です。

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続いて、児童館のあり方について見てゆくことにします。

区は、7年間かけて38すべての小学校で放課後子どもプランを導入してゆく一方で、児童館のあり方を根本的に見直す計画を打ち出しました。

昨年末には「今後の児童館のあり方に関する基本方針(案)」がまとめられ、1月25日までパブリックコメントにかけられました。区は年度内、今年の3月までにこの方針を決定しようとしています。

その中での最大の問題は、小学生を児童館の利用対象から除外しようとしていることです。

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「基本方針(案)」では、子どもの居場所を「再構築」するとしています。

小学生については小学校内に設けられる「放課後子どもプラン」という居場所が確保されるので、これまでの児童館は今後、乳幼児親子と中高生の居場所に特化してゆくというのです。

児童館は児童福祉法によって、0歳から18歳の子どもを対象とする施設とされていますが、小学生を利用対象から除外すれば、その役割が根本的に改変されることになります。

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「基本方針(案)」にそって、具体的に見てみましょう。

現在、区内には25館の児童館があります。これは「半径500mに1館の児童館を」という方針に基づいて整備されてきたもので、この中には、お年寄りから乳幼児まで世代を超えて交流することを目的に2009年4月にオープンした「志茂子ども交流館」も含まれています。

また、児童館点在のすきまを埋めるために、地域の児童の遊び場として設置した北区独自の施設である児童室が4室あります。

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まず、この25館の児童館を再編し、乳幼児親子の居場所機能を中心とする児童館、「(仮称)子どもセンター」に移行してゆきます。

「(仮称)子どもセンター」は、ベビーカーを押しながら徒歩でおおむね15分程度の距離に1ヵ所を基準に設置するとしています。委員会の質疑で区は、具体的には「15~17ヵ所になる」と答えています。

乳幼児親子は「(仮称)子どもセンター」となった新しい児童館で、1日ゆっくりと過ごすことができるとしています。

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次に、中高生の居場所としての児童館、「(仮称)ティーンズ・センター」をおおむね2中学校区に1ヵ所設置するとしています。

北区には現在、12の中学校があるので、「(仮称)ティーンズ・センター」の数は6つ程度になる計算です。

「(仮称)ティーンズ・センター」は、「(仮称)子どもセンター」内に設置するとされています。

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「基本方針(案)」では、「放課後子どもプランや小学校自体に馴染めない児童、何らかの事情で放課後子どもプランに参加できない児童に対する支援」は「(仮称)子どもセンター」でになうとしています。

つまり、特別の事情がある小学生については、現在の児童館に来てもよいとしていますが、全体としては小学生が児童館の利用対象から除外されることは明らかです。

私は、昨年末の区議会第4回定例会本会議で「これでは児童館自体が換骨奪胎だ。児童福祉法に基づく児童館として認められないではないか」と問いましたが、区は「機能として場所を広く捉えることによって、児童館の果たすべき役割は実証できる」と答えました。

区内全体を見れば、小学生の居場所もある、乳幼児も中高生も居場所がある、いわば「大児童館」構想とも呼べる論理ですが、この状態を児童館と呼ぶのはいくらなんでも無理があるといわざるを得ません。

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小学生を児童館の利用対象から除外してしまったら、どんなことになるでしょうか。

なんといっても児童館を楽しみにしている小学生から、遊びの場を奪ってしまうことになります。

放課後子どもプランが実施されても、すべての小学生が利用するわけではありません。東十条のモデル事業では、学童クラブもあわせて登録児童は86%、10月における平日の参加率は36%となっており、プランを利用しているのは3人に1人です。

あとの児童は塾へ行ったり、他の場所で遊んだりしていますが、その中には学校より児童館で遊びたいという小学生もたくさんいます。

放課後子どもプランができたからといって、児童館の役割はなくなりません。子どもが楽しみにしている遊び場を奪ってはなりません。

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児童館は、施設の職員だけでなく、地域のみなさんによって支えられています。先日も、児童館ネットワーク事業の活動報告会が開かれましたが、民生・児童委員、町会・自治会、区議会議員など、たくさんの支援者・協力者が集まりました。

どこの児童館でも、地域とのつながりを生かした「児童館まつり」を開催するなど地域に開かれた活動を展開しています。

「基本方針(案)」では、「(仮称)子どもセンター」がこれまでの地域ネットワーク拠点としての役割を引き続き果たしてゆくとしていますが、今後、児童館が再編されてゆけば、地域との連携も縮小させられてゆく恐れがあります。

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「放課後子どもプランが実施されるから、小学生は児童館を利用しなくてすむ」という考え方をすすめてゆけば、小学生を対象にした他の事業にも影響が出てこないとも限りません。

公園などの屋外で遊び場を提供しているプレーパーク事業は、子どもたちにも大人気です。私は、議会の質問で「今後、放課後子どもプランが実施されても、他の事業を打ち切ることがあってはならない」と質問しましたが、区は「現在のところ(打ち切りの)計画はないが、すべての事業について常に見直しながら、効果的な施策を展開してゆく」などと答え、将来的な事業打ち切りを否定しませんでした。

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報告の最後に、北区の行革プラン、経営改革「新5か年プラン」とのかかわりについてふれておきます。

放課後子どもプランで、新たな遊び場が整備されることは、子どもにとっても保護者にとっても歓迎すべきことです。

一方で、こうした事業を「効率的・効果的」という側面からのみ見て、「民間委託にすれば安上がり」「プランを実施すれば児童館はいらない」という考えに陥れば、子どもの育成にとって重大な影響を及ぼしかねません。

しかし、残念ながら今回の児童館のあり方の見直しは、「児童館を現状のまま存置させつつ、放課後子どもプランを全小学校に展開することは、区をとりまく厳しい社会経済情勢の中で極めて困難」というように、区の財政事情を優先させた結果に他なりません。

本来ならば、子どもの目線にたった見直しこそが必要ではないでしょうか。

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区はこれまで、「財政が厳しい」ことを理由に、区立施設の外部化を推し進めたり、区民サービスの縮小、「受益者負担」の名のもとに利用用・手数料などの負担増を求めるなど、行革を進めてきました。

ところが、今年度末には福祉などに使える財政調整基金が底をつく、足りなくなるなどと危機感をあおっていたのに、昨年末の残高予測は約88億円にまで積み上がっています。北区の財政は厳しいどころか、実に堅調です。

こうした財源も活用し、子どもの遊び場をしっかりと確保することが必要です。

あわせて、放課後子どもプランは、もともと国が全国に実施を求めてきた事業であり、国に対してふさわしい財源を求めてゆくことも大切です。

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私たち日本共産党北区議員団は、放課後子どもプランが全校で実施されるまでには少なくとも7年かかることをふまえ、小学生を児童館の利用対象から除外する「あり方基本方針」は拙速に決定すべきではないと求めてきました。

今日も、みなさんからさまざまなご意見をいただき、今月の26日から始まる北区議会第1回定例会、予算議会の中でも引き続き、慎重な検討を求めてゆきたいと考えています。

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積極的なご議論をいただくことをお願いしまして、私の報告を終わらせていただきます。ご清聴、ありがとうございました。