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大和朝廷と蝦夷の壮絶な闘い「アテルイ」

城北演劇を観る会の例会で、わらび座公演「アテルイ」を鑑賞しました。

古墳時代に成立した大和朝廷と、蝦夷(えみし)と呼ばれた東北地方の民族との壮絶な闘いを描いたミュージカルで、アテルイとは実在した蝦夷の若き棟梁の名前です。

わらび座らしく、ステージ両脇で和太鼓が雄々しく鳴り響くオープニング。獣や化け物扱いされ、「まつろわぬ民」として征伐の対象とされた蝦夷が、実はもっとも人間味にあふれ、自然と仲間を大切に生きる人間集団だったことを、たたみかけるような歌と踊りで描き、冒頭から舞台に引き込まれてゆきます。

腕っぷしの強さからリーダーに推挙されたアテルイが、朝廷との闘いを通じ、仲間との確執や失敗を乗り越えて成長してゆく姿が見どころです。

かたや朝廷軍を統率するのは征夷大将軍に任命された坂上田村麻呂。実はアテルイとは幼なじみであり、佳奈という女性をめぐって恋敵の関係にもあります。

アテルイと田村麻呂は、それぞれの立場から抗争を繰り返しますが、やがてお互いの人格を認め合うようになります。田村麻呂は、蝦夷の民族を守るために自ら投降したアテルイを牢から逃がそうと「俺を斬ってここから逃げよ」と告げますが、アテルイはこれを拒否。結局、副将のモレとともに斬首の極刑に処されることになります。

アテルイを失って自責の念にかられる田村麻呂。数年後、一人の子どもを連れた佳奈と遭遇し、それがアテルイの子、星丸だということを知ります。「アテルイ、お前は星になったのだ」と発した田村麻呂の最後の一言に、未来への希望を感じとることができました。

政治やスポーツの世界でも、「敵」の存在はつきものですが、ウソをついて騙したり、相手を出し抜いたりする関係では本当のライバルとはいえません。闘いを描きながら、宿敵とされた2人の関係に、人間の尊厳が貫かれているところに、この作品のすがすがしさがあるのではないでしょうか。

作品自体は2度目の鑑賞でしたが、「火の鳥」にも主演した戎本みろさんがアテルイを好演、圧倒的な歌と踊りと音楽に、時を忘れた2時間でした。なお、この日は観劇会の当番ということで、終演後、搬出のお手伝いをしました。舞台裏をのぞけ、ちょっぴり得した気分でした。