2013年10月23日(水) | プライベート
久しぶりのフィガロ
区議会第3回定例会が閉会してからも、何かと忙しい日々。
その合間をぬって、久しぶりにモーツァルトの「フィガロの結婚」を観てきました。
今回の上演は、新国立劇場オペラパレスでのシーズンオペラです。
スタッフおよびキャストはこちら。
会場に入ると、サイコロの内部のようなステージが目に飛び込んできました。天井と床、左右の壁に囲まれた真四角の箱、これが全編を通しての舞台となります。
セットといえるものは、この箱の中に積まれた段ボール箱の山と洋服ダンスだけ。これでどう4幕の劇を演じるのか興味がわきました。
ちょっとネタばれになってしまうのですが、劇の進行にともなって均整のとれた部屋がだんだん傾き、壊れてゆくという演出が見る者を驚かせます。それはあたかも、秩序だった身分制度がいつの間にか崩壊してゆく様を描き出すように。
歌手の方は、みな実力派ぞろいに感じました。
タイトルロールのイケメン・フィガロを演じたマルコ・ヴィンコ、アルマヴィーヴァ伯爵役のレヴェンテ・モルナールは存在感あり。マンディ・フレドリヒは3幕で、伯爵夫人のアリアをしっとりと聴かせました。
スザンナ役の九嶋香奈枝は、外国人キャストに引けをとらない歌唱力。とにかく一生懸命に歌う姿に好感が持てました。
マルチェッリーナ、バルトロ、アントーニオ、バルバリーナといった脇を固める配役もすべて日本人で、大健闘でした。
レナ・ベルキナは無難にケルビーノを演じていましたが、もうちょっと個性が出るとよかったと思います。
3幕の結婚式、通常は村人たちが踊りで祝福する場面で舞台から人がいなくなり、オケだけが曲を演奏するという趣向にはちょっと首をかしげましたが、全体としては落ち着き、まとまった演出でした。
天才モーツァルトの魅惑的なアリアを散りばめながら、思惑や独占欲にまみれたたくさんの登場人物が入り乱れて「狂おしい1日」がユーモラスに展開してゆく舞台。
しかし本当の面白さは、権力者である伯爵の策略にあの手この手で対抗し、最後には立場を逆転させ伯爵に許しを乞わせる、フィガロやスザンナら使用人の下剋上的活躍にあるのではないでしょうか。
それはさながら、現代の「半沢直樹」人気にもつながる痛快さに思えます。
ところで、オペラでは普通、これでもかというくらい何度も何度もおこなわれるカーテンコールが、たった1回で終わってしまったのが少々気がかりでした。
来月には北とぴあ国際音楽祭で、再び「フィガロの結婚」を鑑賞する予定。2つのフィガロを、じっくり見比べ、聴き比べてみたいと思います。