2013年2月16日(土) | プライベート
「クラシック名曲セレクション」ボヘミアの森から
かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホールで開かれた「三ツ橋敬子と千住真理子の『クラシック名曲セレクション』~ボヘミアの森から」を鑑賞しました。
お目当てはもちろん千住真理子さんでしたが、今回の大収穫は指揮者の三ツ橋敬子さんでした。
今日の演奏会は「ボヘミアの森から」とあるように、ボヘミア地方(チェコの西部・中部地方)の名曲を集めたプログラムでした。
オーケストラは、東京フィルハーモニー交響楽団。
- 連作交響詩「我が祖国」より”モルダウ” <スメタナ>
- チャールダーシュ <モンティ>
- ツィゴイネルワイゼン <サラサーテ>
- ハンガリー狂詩曲第2番 <リスト>
休憩
- 交響曲第9番「新世界より」 <ドヴォルザーク>
アンコール
- スラヴ舞曲第1番 <ドヴォルザーク>
三ツ橋敬子さんは、新進気鋭の若手女性指揮者。東京藝大で指揮を学び、小澤征爾氏、小林研一郎氏などに師事。2008年の第10回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで、日本人として、女性で初めて最年少優勝を果たしたという経歴の持ち主だそうです。
日本人の女性指揮者といえば西本智実さんが有名ですが、三ツ橋さんは、そのあとを追っかける存在でしょうか。現在は、イタリア在住で、Newsweek Japan誌で「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれたそうです。
今回は、最前列で演奏を聴きましたが、最初から最後まで、三ツ橋さんの指揮ぶりに目が釘づけでした。演奏中に、指揮者にこれほど見とれたのは初めてです。
その演奏はといえば、まろやか、かつダイナミック。女性特有の柔らかさと、オケをぐいぐいと引っ張る力強さを両方兼ね備えた、実に堂々たる指揮ぶりでした。
1曲目の「モルダウ」が終わると、マイクを握ってあいさつ。千住さんのお株を奪うようなトークで、観客を惹きつけます。
続いて、千住さんのソロで2曲。いずれも技巧を弄したヴァイオリンの名曲、「チャールダーシュ」「ツィゴイネルワイゼン」です。
三ツ橋さんは、ソリストの音色にていねいに、ていねいに寄り添いながらオケをコントロールしていました。千住さんも、ずいぶん気持ちよく弾けたのではないかと想像します。
2人のかけあい漫才のようなトークの後、千住さんが退場。三ツ橋さんは、休憩をはさみ、アンコールをふくめ残り3曲を振りました。
なんといっても、圧巻は「新世界」。ストーリー性に満ちた楽曲構成、第1楽章や第2楽章の主題が現れつつ消える中で、圧倒的な存在感をもつ主題がフィナーレまで駆け巡る第4楽章。ドヴォルザークがアメリカ(新世界)から、故郷ボヘミアを想って作ったといわれる曲ですが、日本人の心にも染み入るような郷愁感が人気の秘密かもしれません。
三ツ橋さんは、身体全体、とくにひざを柔らかく使って、のびやかにタクトを振り、オケをリード。吸い込んだ息を、フゥーと吐き出す音まで聞こえる、気迫のこもった指揮です。
命を産み出すのと同じように音を産み出す――女性指揮者の姿と演奏に、そんな感覚を抱きました。
三ツ橋さんの今後の活躍に、目が離せなくなりそうです。
さて、会場となったモーツァルトホールには、モーツァルトの銅像が建っていました。
最寄りの青砥駅にも音楽家の彫刻が置かれていて、演奏会帰りの人が「ここは音楽の町だな」とつぶやいていたのが印象的でした。
素晴らしい演奏会には、心が癒されます。